あなたは新しい商品やサービスを市場に投入した時、どんな顧客層を最初に狙いますか? 多くの企業は、流行に敏感で新しいもの好きの「イノベーター」や「アーリーアダプター」に目を向けがちです。 しかし、実はその次の層、「遅れて買う人」にこそ、大きなビジネスチャンスが隠されています。
今回は、イノベーター理論としても知られるトーマス採用曲線を紐解きながら、一見地味に思える「遅れて買う人」を効果的に獲得するための【5つの顧客獲得戦略】をご紹介します。 この層を味方につけることで、あなたのビジネスは持続的な成長を実現できるでしょう。
トーマス採用曲線とは?
トーマス採用曲線(イノベーター理論)とは、新しい商品やサービスが市場に浸透していく過程を、顧客のタイプ別に分類したものです。 具体的には、以下の5つの顧客層に分けられます。
- イノベーター(革新者): 全体の2.5%。新しいものをすぐに取り入れ、リスクを恐れない層。
- アーリーアダプター(初期採用者): 全体の13.5%。流行に敏感で、情報収集に積極的な層。インフルエンサーになりやすい。
- アーリーマジョリティ(前期追随者): 全体の34%。新しいものには慎重だが、メリットが明確なら受け入れる層。この層に浸透できるかが普及のカギとなる。
- レイトマジョリティ(後期追随者): 全体の34%。新しいものには懐疑的で、多くの人が使っているのを確認してから採用する層。「遅れて買う人」がここに該当します。
- ラガード(遅滞者): 全体の16%。最も保守的で、最後まで新しいものを受け入れない層。
多くの企業が注目するイノベーターやアーリーアダプターは、市場全体のわずか16%に過ぎません。 それに対して、アーリーマジョリティとレイトマジョリティを合わせた「マジョリティ層」は実に68%を占めます。 この中でも特に、レイトマジョリティ、つまり「遅れて買う人」を狙うことで、市場の大きなパイを獲得できるのです。
なぜ「遅れて買う人」を狙うべきなのか?
「遅れて買う人」は、流行に飛びつくことはありません。 しかし、一度商品やサービスの価値を認めると、その層が持つ「手堅さ」と「安定性」が、長期的な売上とブランドの確立に大きく貢献します。 彼らが安心して購入できる環境を整えることが、ビジネスを盤石にする秘訣なのです。
彼らが購買に至る主な動機は、以下の点にあります。
- リスクの回避: 新しいものには失敗がつきものだと考えており、他者の成功事例を見てから行動します。
- 実用性の重視: トレンドよりも、自分にとっての具体的なメリットや実用性を重視します。
- 安心感の追求: 多くの人が使っているという実績や、信頼できる情報源からの推奨を求めます。
【5つの顧客獲得戦略】で「遅れて買う人」を味方につける
それでは、「遅れて買う人」を効果的に獲得するための具体的な戦略を見ていきましょう。
1. エビデンスと実績を徹底的に訴求する
「遅れて買う人」は、不確実性を嫌います。 彼らが安心して購入できるように、商品やサービスが「実際に役立つ」ことを示す具体的なデータや実績を惜しみなく提示しましょう。
- 顧客事例: 導入企業の成功事例や、個人の利用者の声(写真や動画付きだとさらに良い)を積極的に公開する。
- 数値データ: 「〇%のコスト削減に成功」「利用者の満足度〇%」といった具体的な数字で効果を示す。
- メディア掲載・受賞歴: 客観的な評価として、権威あるメディアでの紹介や受賞歴をアピールする。
- 専門家の推薦: 業界の専門家やインフルエンサーからの推薦コメントを掲載する。
2. 周囲の評価・口コミを可視化する
「遅れて買う人」は、周囲の人が使っているかどうかを非常に重視します。 彼らが「みんなが使っているなら安心だ」と思えるような環境を作りましょう。
- レビューサイトの活用: Amazon、楽天、食べログなどのレビューサイトで良い評価を多く集める。
- SNSでの言及を促進: ハッシュタグキャンペーンなどを行い、SNS上での口コミを増やす。UGC(User Generated Content)は強力な説得力になります。
- 友人紹介キャンペーン: 既存顧客が友人を紹介することで特典が得られる仕組みを作り、口コミを意図的に発生させる。
- インフルエンサーマーケティング: 彼らが信頼するインフルエンサーに商品を使ってもらい、その体験を語ってもらう。ただし、ステマにならないよう、透明性を確保することが重要です。
3. 不安要素を徹底的に排除する手厚いサポート体制
新しいものに対して不安を感じやすい「遅れて買う人」にとって、購入後のサポートは非常に重要です。 「もしもの時も大丈夫」と思えるような安心感を提供することで、購入へのハードルを下げることができます。
- 充実したFAQ: 導入前の疑問から使用中のトラブルまで、想定されるあらゆる質問に対する回答を用意する。
- 丁寧な顧客対応: 電話、メール、チャットなど、複数の問い合わせ窓口を用意し、迅速かつ丁寧な対応を心がける。
- 保証制度の充実: 返金保証や長期保証など、購入後のリスクを軽減する制度を設ける。
- 導入支援・使い方セミナー: 初めて利用する人でもスムーズに使えるよう、導入サポートや使い方に関するセミナー、チュートリアル動画などを提供する。
4. シンプルで分かりやすい導入プロセスと操作性
「遅れて買う人」は、複雑な手続きや操作を嫌います。 誰でも簡単に始められる、分かりやすい体験を提供することが重要です。
- 無料トライアル・お試し期間: 実際に使ってみて、価値を実感できる機会を提供する。
- 直感的なUI/UX: 商品やサービスのインターフェースは、説明書を読まなくても直感的に操作できるデザインにする。
- ステップバイステップの導入ガイド: 初期設定や使用開始までの手順を、詳細かつ分かりやすく提示する。
- 初期費用や手続きの簡素化: 無駄な手数料や煩雑な契約手続きを省き、購入までの流れをスムーズにする。
5. 「みんなが使っている」という安心感を醸成する
「遅れて買う人」は、孤立することを好みません。 彼らが「自分だけ置いていかれていないか」「世間の常識になっているか」という意識を持つように働きかけましょう。
- 「〇〇万人が利用中!」といった実績のアピール: 具体的な数字で、多くの人が使っている事実を提示する。
- 社会現象化の演出: ニュースリリースやプレスリリースを活用し、商品やサービスが社会に浸透していることを発信する。
- 限定性や希少性を逆手に取る: 「今、このチャンスを逃すと乗り遅れる」といった、社会的な圧力に近いメッセージを伝える。ただし、煽りすぎには注意が必要です。
- コミュニティ形成の支援: ユーザー同士が交流できる場を提供し、安心感を共有できる環境を作る。
まとめ
「遅れて買う人」、すなわちレイトマジョリティ層は、市場の大きなボリュームゾーンであり、彼らを獲得できるかどうかでビジネスの安定性が大きく変わります。 彼らは新しいものに飛びつくことはありませんが、一度信頼を得ると、長期的な顧客となり、強固な基盤を築いてくれます。
今回ご紹介した【5つの顧客獲得戦略】は、派手さはないかもしれませんが、着実に「遅れて買う人」の心をつかみ、あなたのビジネスを次のステージへと導くための強力な武器となるでしょう。 ぜひこれらの戦略を実践し、持続的な成長を実現してください。