AIDMAとAISASの違いから、広告の導線を考える

はじめに:お客様は、どんな流れで商品を買うんだろう?

「よし、うちの商品の広告を出すぞ!」と意気込んでも、ただ「買ってください!」と叫ぶだけでは、なかなかお客様は振り向いてくれません。

なぜなら、お客様が商品やサービスを「買う」までには、心の中でいくつかのステップを踏んでいるからです。まるで、恋愛と同じで、いきなりプロポーズされても困るけど、出会って、相手を知って、好きになって、そして…という段階があるようなものですね。

この「お客様の心の動き」を理解することが、広告やWebサイトを作る上で、めちゃくちゃ重要なんです。

1. 「知る」と「買う」の間にある大きな壁

あなたの会社や商品のことを、お客様に「知ってもらう」ことはとても大切です。でも、知ってもらったからといって、すぐに買ってくれるわけではありませんよね。

テレビCMを見て「あ、この商品、いいかも!」と思っても、すぐに買いに走る人は少ないでしょう。インターネットで広告を見ても、「ふーん」で終わってしまうことも少なくありません。

「知る」と「買う」の間には、お客様の「興味」「関心」「欲求」「比較検討」といった、様々な心の動きのステップがあるのです。この壁を乗り越えてもらうための「導線(どうせん)」を、広告やWebサイトの中にしっかり作ってあげる必要があります。

2. 古典モデル「AIDMA」と現代モデル「AISAS」

この「お客様の心の動き」を説明する有名なマーケティングモデルが2つあります。

  • AIDMA(アイドマ):主にテレビや雑誌などの「マスメディア」が中心だった時代のモデル。
  • AISAS(アイサス):インターネットが普及し、お客様が自分で情報を検索するようになった「現代」のモデル。

どちらもお客様の「購買行動のプロセス」を表していますが、時代背景が違うため、お客様の行動や、私たち売り手側がどうアプローチすべきかに違いがあります。この二つの違いを知ることで、あなたの広告やWebサイトの「導線」が、グッと効果的になるはずです。

この記事では、これらAIDMAとAISASのモデルを比較しながら、お客様の心の動きに合わせた「広告の導線」をどう設計すれば良いか、素人目線で分かりやすく解説していきます。あなたのビジネスが、お客様に「買いたい!」と思ってもらうためのヒントを見つけていきましょう。

第1章:古典の王道「AIDMA」- 一方通行の時代のお客様の動き

まずは、長年マーケティングの世界で使われてきた「AIDMA(アイドマ)」モデルから見ていきましょう。これは、主にテレビや雑誌、新聞といった「マスメディア」が情報発信の主役だった時代のお客様の行動を表しています。

お客様が情報を「受け取る側」であり、企業からの一方的な情報発信が中心だった時代のお客様の心の動き、と考えれば分かりやすいでしょう。

AIDMAの5つのステップ

AIDMAは、次の5つの頭文字を取ったものです。

  1. A:Attention(注意)
  2. I:Interest(興味)
  3. D:Desire(欲求)
  4. M:Memory(記憶)
  5. A:Action(行動)

それぞれを詳しく見ていきましょう。

1. A:Attention(注意)- まずは「気づいて!」

最初はお客様に「あなたの存在」を気づいてもらうステップです。

  • お客様の心の状態:まだあなたの会社や商品を知らない状態。「何それ?」
  • 企業のアプローチ:テレビCMで何度も流したり、新聞広告で大きく打ち出したりして、とにかく目立つこと。派手なキャッチコピーやインパクトのある映像で、「おや?」と目を引くことが重要です。
  • 例:
    • テレビで流れる印象的なCMソングや、有名タレントが出ているCM。
    • 新聞の全面広告や、雑誌の巻頭ページに掲載される広告。

ポイント:まずは「気づかせる」ことに全力を注ぎます。お客様の注意をどれだけ引きつけられるかが勝負です。

2. I:Interest(興味)- 「ちょっと気になるな」

次に、気づいてくれたお客様に「もっと知りたいな」「ちょっと気になるな」と思ってもらうステップです。

  • お客様の心の状態:商品やサービスに少しだけ関心を持った状態。「これ、どんな商品なんだろう?」
  • 企業のアプローチ:商品の特徴やメリットを分かりやすく伝え、お客様が「自分に関係あるかも」と感じるように誘導します。CMや広告の中で、商品の具体的な使い方や、どんな良いことがあるのかを示します。
  • 例:
    • CMで商品の便利さを短いストーリーで表現する。
    • 雑誌広告で商品の詳細な機能や、お客様の声を紹介する。

ポイント:単に「知る」から「もっと知りたい」へ、お客様の気持ちを動かすことが重要です。お客様の「なぜ?」に答える情報を提供します。

3. D:Desire(欲求)- 「欲しい!」「使いたい!」

興味を持ったお客様が、心の底から「欲しい!」「使ってみたい!」という強い欲求を抱くステップです。

  • お客様の心の状態:商品やサービスを強く欲している状態。「これがあれば、私の悩みが解決する!」
  • 企業のアプローチ:商品の持つ魅力や、お客様にとっての具体的なメリットを感情に訴えかける形で伝えます。利用後の「理想の未来」を想像させるような表現が効果的です。限定性や希少性をアピールして、購買意欲をさらに高めることもあります。
  • 例:
    • 「この一本で、あなたの肌は生まれ変わる」といった、未来の姿を想像させるキャッチコピー。
    • 「今だけ限定!」といった、購買を促す言葉。

ポイント:お客様の感情に訴えかけ、具体的なベネフィット(お客様が得られる利益)を明確に伝えることで、購買への強い動機付けを行います。

4. M:Memory(記憶)- 「そういえば、あの商品…」

欲求を抱いたお客様が、実際に購入する時が来た時に、あなたの会社や商品を「思い出してもらう」ステップです。

  • お客様の心の状態:一時的に欲求を持ったが、まだ購入には至っていない状態。他の情報に埋もれそうになっている。「どんな商品だったっけ?」
  • 企業のアプローチ:購買のタイミングが来た時、あるいは他の商品と比較検討する際に、自社の商品を思い出してもらえるように、繰り返し広告を見せたり、印象的なCMを流したりします。ブランド名を覚えやすくする工夫も重要です。
  • 例:
    • キャッチーなCMソングやフレーズを使い、記憶に残りやすくする。
    • 何度も同じ広告を見せて、刷り込み効果を狙う。

ポイント:「欲求」は一時的なものになりがちです。いざという時に思い出してもらうための「記憶」への働きかけが、購買行動に繋がる鍵となります。

5. A:Action(行動)- 「よし、買おう!」

そして最後に、お客様が実際に「購入する」「問い合わせをする」といった行動を起こすステップです。

  • お客様の心の状態:購入を決意した状態。「今すぐ手に入れたい!」
  • 企業のアプローチ:購入方法を分かりやすく提示したり、店舗への誘導を行ったりします。購入へのハードルをできるだけ低くし、スムーズに購入できるように促します。
  • 例:
    • 「お近くのコンビニで」「お求めは〇〇ストアで」といった、購入場所の明確な提示。
    • 「今すぐお電話ください」という具体的な行動指示。

ポイント:お客様が行動を起こしやすいように、最後の「ひと押し」を具体的に提示し、購入までの障害をなくすことが重要です。

第2章:現代の購買行動モデル「AISAS」- お客様が「自分で探す」時代

AIDMAモデルが生まれた後、インターネットが登場し、私たちの生活は大きく変わりましたよね。今や、何か知りたいことがあれば、すぐにスマホで調べられる時代です。この変化に合わせて生まれたのが「AISAS(アイサス)」モデルです。

AISASは、お客様が情報を「受け取るだけ」ではなく、「自分で探し、共有する」という現代の行動が加わった点が大きな特徴です。

AISASの5つのステップ

AISASは、次の5つの頭文字を取ったものです。

  1. A:Attention(注意)
  2. I:Interest(興味)
  3. S:Search(検索)
  4. A:Action(行動)
  5. S:Share(共有)

AttentionとInterestはAIDMAと同じですが、その後に続く行動が変わっているのがポイントです。

1. A:Attention(注意)- まずは「気づいて!」(AISASでも同じ)

最初のステップはAIDMAと同じで、お客様にあなたの会社や商品に「気づいてもらう」ことです。

  • 企業のアプローチ:テレビCMや雑誌広告はもちろん、インターネット広告(バナー広告、動画広告など)やSNSでの発信も重要になります。お客様がどこにいても目に留まるように、様々な場所で「おや?」と思わせる仕掛けをします。
  • 例:
    • YouTubeで動画を見ている時に流れる短い広告。
    • スマホでニュースを見ている時に出てくるバナー広告。
    • SNSで友達がシェアした面白い投稿。

ポイント:現代では、お客様がどこにいるか分からないから、いろんな場所で「気づかせる」工夫が必要です。

2. I:Interest(興味)- 「ちょっと気になるな」(AISASでも同じ)

次に、お客様に「この商品、どんなものなんだろう?」と興味を持ってもらうステップです。

  • 企業のアプローチ:広告の内容で、商品の特徴や、お客様にとってのメリットを簡潔に伝えます。興味を持ったお客様が次の行動に移りやすいように、Webサイトへのリンクを目立つように配置したり、短時間で商品の魅力が伝わる動画を用意したりします。
  • 例:
    • 「〇〇の悩みが解決!」と書かれた広告の見出し。
    • 商品の魅力が詰まった、短くて面白いSNS動画。

ポイント:AIDMAとの違いは、この次のステップで「記憶」ではなく「検索」が入る点です。お客様は「気になる」と同時に「調べたい」と思うようになっています。

3. S:Search(検索)- 「自分で調べてみよう!」

ここがAISASの大きな特徴です。お客様は興味を持つと、すぐに自分で情報を探し始めます。

  • お客様の心の状態:「もっと詳しく知りたい」「本当に自分に合っているかな?」「他にどんな商品があるんだろう?」と、能動的に情報を集めている状態。
  • 企業のアプローチ:お客様が検索するであろうキーワードで、あなたのWebサイトが上位に表示されるようにする(SEO対策)。商品の詳細情報、お客様の声、比較情報、使い方ガイドなど、お客様が知りたいと思う情報をWebサイトにたくさん用意しておくことが重要です。SNSでの口コミやレビューも、この検索行動に影響を与えます。
  • 例:
    • Googleで「〇〇(商品名) 口コミ」と検索する。
    • YouTubeで「〇〇(商品名) レビュー」動画を探す。
    • SNSで「#〇〇(商品名)」のハッシュタグを見て、他の人の投稿を探す。

ポイント:お客様が「自分で探す」時代だからこそ、お客様が検索するであろう場所に、求めている情報をしっかり用意しておくことが、売上につながる大切な導線になります。

4. A:Action(行動)- 「よし、買おう!」(AISASでも同じ)

検索して納得したお客様が、実際に購入するステップです。ここはAIDMAと同じ「Action」です。

  • 企業のアプローチ:Webサイトで購入ボタンを分かりやすく配置したり、購入までの手続きをシンプルにしたりして、お客様が迷わずに購入できるようにします。購入手続きが複雑だと、せっかくの購買意欲が冷めてしまうこともあります。
  • 例:
    • ECサイトの「カートに入れる」ボタンが大きく見やすい。
    • 支払い方法がたくさん選べる。
    • 会員登録なしでも購入できる。

ポイント:「検索」で納得したお客様の背中を、スムーズな購入体験で優しく押してあげましょう。

5. S:Share(共有)- 「これ、良かったよ!」

これもAISASの大きな特徴です。商品を購入したお客様が、その体験や感想を他の人と「共有」するステップです。

  • お客様の心の状態:商品に満足し、「この良さを誰かに伝えたい!」と思っている状態。
  • 企業のアプローチ:お客様が簡単に共有できるように、WebサイトにSNSのシェアボタンを設置したり、レビュー投稿を促したりします。お客様のポジティブな「声」は、新しいお客様を呼び込むための最強の広告になります。
  • 例:
    • 買った商品の写真をSNSに投稿する。
    • レビューサイトに感想を書き込む。
    • 友達や家族に「これいいよ!」と勧める。

ポイント:「共有」された情報は、次のお客様の「注意」や「検索」のきっかけになります。良い口コミがどんどん広がるように、お客様が共有したくなるような良い商品やサービスを提供し、共有を促す仕組みを作ることが大切です。

まとめ:お客様の「心の動き」に合わせて「導線」を引こう

AIDMAとAISAS、二つのモデルを見比べてみて、いかがでしたか?

AIDMAが「企業からお客様へ」の一方通行のコミュニケーションが中心だったのに対し、AISASは「お客様が自分で調べて、情報を共有する」という双方向のコミュニケーションが加わっていることが大きな違いです。

現代のビジネスにおいて、私たちはこのAISASモデルを強く意識する必要があります。

  • 「Attention(注意)」と「Interest(興味)」:お客様に気づいてもらうためのテレビCMやWeb広告はもちろん、SNSでの目を引く投稿も重要です。お客様が「なんだこれ?」「面白そう!」と思うきっかけを作りましょう。
  • 「Search(検索)」:お客様が興味を持ったら、必ず自分で調べて情報を見つけようとします。だから、あなたのWebサイトやブログには、お客様が知りたい情報を分かりやすく、たくさん用意しておく必要があります。Google検索で上位表示されるための工夫(SEO対策)も欠かせません。
  • 「Action(行動)」:お客様が「買いたい!」と思ったら、すぐに、そして迷わずに買えるようなWebサイトの作りが大切です。購入ボタンを分かりやすくしたり、手続きをシンプルにしたりしましょう。
  • 「Share(共有)」:お客様が「良かった!」と感じたら、他の人に伝えたくなるものです。SNSで簡単にシェアできるボタンを用意したり、レビューを投稿しやすい仕組みを作ったりして、良い口コミが広がるように後押ししましょう。

まるで、お客様をゴール(購入)まで導くために、道しるべを立て、スムーズな道を整え、時には休憩所(情報提供)も用意してあげる「導線」を引くようなものです。

あなたのWebサイトや広告が、お客様の「心の動き」に寄り添い、それぞれのステップで適切な情報や手助けを提供することで、お客様は迷うことなく、あなたの製品やサービスにたどり着き、「買いたい!」と感じてくれるでしょう。

ぜひ、あなたのお客様が「AIDMA」と「AISAS」のどちらのステップを今踏んでいるのか、そしてそれぞれのステップで「何を求めているのか」を想像しながら、広告やWebサイトの導線を設計してみてください。きっと、今よりもっと多くのお客様に「選ばれる」ビジネスになるはずです。

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