全てのビジネスはストーリーである。BtoB/BtoC共通の売れる会社がやっている物語戦略

ほんと、人生のタイミングっておもしろい。

知り合いの大手広告代理店に営業を兼ねて挨拶の連絡をしようと思ったら、
ちょうど1週間ほど前にその会社からスカウトの連絡が届いていたんです。

これって偶然なのか、必然なのか。
そんなことを考えながら、この流れを大事にしたいなと改めて思いました。

振り返ると、ここにはまさに「ビジネスのストーリー」の力が働いていた気がします。
「挨拶しておこう」という私の意思と、
「この人と一緒に仕事をしたい」という先方の気持ちが、
絶妙なタイミングで重なり合った結果なんじゃないかと。

一見偶然のように見えて、実はお互いの背景にある「物語」が引き寄せた必然。
これこそが「全てのビジネスはストーリーである」という言葉の本質だと思います。

BtoBでもBtoCでも、売れる会社はこの「物語戦略」を上手に活かしている。
今日はそのポイントを、少し深掘りしていきますね。

なぜ「物語戦略」がBtoB/BtoC問わず必要なのか

現代のビジネス環境では、商品やサービスの機能的差別化だけでは勝負が決まらない。BtoBであれBtoCであれ、最終的に意思決定をするのは「人間」だからです。。

人間は論理だけで判断しない。感情で動き、論理で正当化する生き物である。だからこそ、どんなビジネスにおいても「感情を動かすストーリー」が不可欠です。

物語戦略が威力を発揮する理由

記憶への定着力

データや機能の羅列は忘れられやすいが、ストーリーは記憶に残る。人間の脳は物語形式の情報を処理するのが得意。

感情的つながりの創出

論理的な説明では得られない「共感」や「信頼」といった感情的なつながりを生み出す。この感情的なつながりが、長期的な顧客関係の基盤となる。

差別化の実現

機能や価格では模倣されやすいが、ストーリーは企業独自のものであり、真似することが困難。

意思決定の促進

ストーリーは複雑な情報を分かりやすく整理し、意思決定者の判断を助ける。特にBtoBにおいては、社内での提案時に「説明しやすい物語」があると導入が進みやすい。

売れる会社が実践している3つのストーリー軸

成功している企業を分析すると、3つの共通するストーリー軸が見えてくる。

1. 起源の物語(創業ストーリー)

「なぜこの会社が生まれたのか」の物語

創業の背景、創業者の思い、解決したかった課題など、会社の存在理由を物語として語る。これにより、企業のミッションや価値観が明確に伝わり、共感を呼ぶ。

2. 顧客成功の物語(成功事例ストーリー)

「お客様がどう変わったか」の物語

商品やサービスを通じて、顧客がどのような課題を解決し、どんな成功を手に入れたかを具体的なストーリーとして語る。これにより、見込み客は自分の未来を想像しやすくなる。

3. 革新の物語(イノベーションストーリー)

「どうやって新しい価値を生み出したか」の物語

技術開発の苦労話、新しいアプローチの発見、業界の常識を覆した経緯など、イノベーションのプロセスを物語として語る。これにより、商品やサービスの独自性と価値が伝わる。

BtoBビジネスでの物語戦略の実例

BtoBビジネスにおいても、意思決定者は感情で動く人間だ。特に大きな投資を伴う決定では、論理的な正当性だけでなく、感情的な確信が重要になる。

セールスフォースの物語戦略

起源の物語: 「No Software」
セールスフォースは「ソフトウェアの終焉」を宣言し、クラウドという新しい概念を提唱した。創業者マーク・ベニオフが描いた「ソフトウェアをサービスとして提供する」という革新的なビジョンは、多くの企業に共感を呼んだ。

顧客成功の物語: 顧客の成長物語
導入企業の売上向上や業務効率化の具体的な数値と、その背景にある担当者の努力や成長を物語として伝える。「営業チームが劇的に変わった」という変革ストーリーが、新規顧客の心を動かす。

Slackの物語戦略

革新の物語: ゲーム開発からの転身
もともとゲーム開発会社だったSlackが、社内コミュニケーションツールとして使っていたものが評判となり、ピボットした物語。「偶然から生まれた必然」というストーリーが、プロダクトの自然さと使いやすさを裏付けている。

BtoCビジネスでの物語戦略の実例

BtoCでは、より感情的で個人的なストーリーが効果を発揮する。消費者は商品を買うのではなく、その商品が約束する「体験」や「変化」を買う。

ナイキの物語戦略

顧客成功の物語: アスリートの挑戦
「Just Do It」のスローガンとともに、様々なアスリートの挑戦と成功の物語を発信。消費者は靴を買うのではなく、「自分も挑戦できる」という可能性を買っている。

革新の物語: 技術開発の物語
エアクッション技術の開発秘話、新素材への挑戦など、技術革新の背景にある開発者の情熱と試行錯誤を物語として伝える。

パタゴニアの物語戦略

起源の物語: 環境への責任
創業者イヴォン・シュイナードの自然愛と環境への責任感から生まれた企業理念。「地球が唯一の株主」という姿勢を貫く物語が、同じ価値観を持つ顧客の強い支持を得ている。

革新の物語: 持続可能性への挑戦
リサイクル素材の開発、製造プロセスの環境負荷削減など、持続可能なビジネスへの取り組みを継続的なイノベーション物語として発信。

物語戦略を成功させる5つのポイント

効果的な物語戦略を構築するために、以下の5つのポイントを押さえよう。

1. 真実性(本物であること)

作り話では人の心は動かない。実際の体験、本当の想い、リアルなデータに基づいた物語でなければ、見抜かれてしまう。特にBtoBでは、後から検証される可能性が高いため、真実性は絶対条件です。

2. 具体性(詳細さ)

抽象的な表現ではなく、具体的な人物、場面、数字を使う。「多くのお客様に喜んでいただいています」ではなく、「A社のX部長が『導入後3か月で営業効率が40%向上した』と喜んでくださいました」という具体性が物語に説得力を与える。

3. 感情的共鳴(心に響くこと)

ターゲットが抱えている感情や課題に寄り添う物語を作る。BtoBなら「業務の非効率さに悩む担当者の気持ち」、BtoCなら「理想の自分になりたいという願望」など、相手の感情に響く要素を織り込む。

4. 一貫性(統一性)

全てのタッチポイントで一貫したストーリーを伝える。Webサイト、営業資料、広告、社員の発言まで、すべてが同じ物語の一部として機能するよう統一する。

5. 進化性(成長性)

物語は固定的なものではなく、事業の成長とともに進化させる。新しい成功事例、技術革新、市場の変化に合わせて、物語も更新し続ける必要がある。

あなたのビジネスでストーリーを作る実践方法

最後に、実際にあなたのビジネスで物語戦略を構築するための具体的な手順を紹介しよう。

ステップ1: ストーリーの棚卸し

まずは、既に持っている物語の素材を整理する。

起源の物語の素材

  • なぜこの事業を始めたのか?
  • 創業時に解決したかった課題は何か?
  • 最初の顧客はどのような反応だったか?

顧客成功の物語の素材

  • 最も印象的な顧客の成功事例は?
  • 導入前後でどのような変化があったか?
  • 顧客からもらった心に残る言葉は?

革新の物語の素材

  • 開発で最も苦労したポイントは?
  • 競合との違いを生み出したアイデアは?
  • 業界の常識を覆した経験は?

ステップ2: ターゲット別のストーリー設計

BtoBとBtoC、さらにはターゲット層によって、響くストーリーは異なる。

BtoBの場合

  • 意思決定者の課題や責任に焦点を当てる
  • ROIや効率化などのビジネス価値を物語に織り込む
  • 導入の不安を取り除く安心要素を含める

BtoCの場合

  • 個人的な感情や願望に寄り添う
  • ライフスタイルの変化や自己実現を描く
  • 共感しやすい日常のシーンを使う

ステップ3: ストーリーの体系化

3つのストーリー軸(起源の物語/顧客成功の物語/革新の物語)それぞれで、長短複数のバージョンを作成する。

  • 30秒版: エレベーターピッチで使える簡潔版
  • 3分版: 営業プレゼンや動画で使える標準版
  • 10分版: 詳細な説明や講演で使える詳細版

ステップ4: 効果測定と改善

物語戦略の効果を定期的に測定し、改善を続ける。

定量的指標

  • 問い合わせ数の変化
  • 成約率の向上
  • 顧客ロイヤルティスコア

定性的指標

  • 顧客からのフィードバック
  • 営業チームの使いやすさ
  • ブランド認知の変化

最初に書いた代理店との偶然の出会いも、実は双方の「物語」があったからこそ生まれたタイミングだったのかもしれない。

ビジネスは数字や論理だけで動くものではなく、そこには必ず「人」がいて、「感情」がある。だからこそ、どんなビジネスにも「物語」が必要です。

あなたのビジネスには、どんな物語が眠っているだろうか?その物語を見つけ、磨き上げ、適切に伝える。それこそが、BtoB/BtoC問わず、売れる会社が実践している物語戦略の真髄です。

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