はじめに:広告を出す前に、考えるべきこと
「よし、かっこいい広告を作って、インターネットにバンバン流そう!」
「とにかくたくさんの人に知ってもらえれば、きっと売れるはず!」
広告を出そうとするとき、こんな風に考えていませんか? もちろん、広告を出すこと自体は大切です。でも、ただ「広告を出す」ことだけを考えていると、残念ながら、思ったような結果が出ないことがよくあります。
まるで、宝探しゲームで「宝を見つけるぞ!」と意気込んで、すぐにシャベルで地面を掘り始めても、どこを掘ればいいか分からなければ、疲れるばかりで宝は見つからないのと同じです。
広告を成功させるためには、シャベル(=広告)をどう使うか、という「具体的な動き」だけを考えるのではなく、宝がどこにあるのか、どうやってそこまでたどり着くのか、という「大きな絵」を描くことがとても大切なんです。
1. 広告は「手段」、目的じゃない
Webサイトも、SNS広告も、チラシも、テレビCMも、すべて「広告」という一つの「手段」です。目的は「売上を増やすこと」だったり、「会社や商品の名前を知ってもらうこと」だったりしますよね。
でも、ついつい私たちは「広告を出すこと」自体が目的になってしまいがちです。新しい広告のやり方が出てくると、「うちもあれをやろう!」と飛びついてしまうかもしれません。でも、その広告が、本当にあなたの会社の「目的」を達成するのに役立つのか、立ち止まって考えることが必要です。
2. 「戦略」と「戦術」って何?
ここで出てくるのが、今日のテーマである「戦略(せんりゃく)」と「戦術(せんじゅつ)」という言葉です。これらは、ビジネスやスポーツ、さらには戦争など、様々な場所で使われる、とても大事な考え方です。
- 戦略(Strategy):「どこで、何を目指すのか?」という大きな目標と、そこに至るまでの「大きな絵」のこと。勝つための「筋書き」や「方向性」を決めます。
- 戦術(Tactics):「その目標を達成するために、具体的にどう動くのか?」という具体的な行動や方法のこと。「戦略」で決めた方向に進むための「やり方」です。
例えるなら、
- 戦略:「運動会で徒競走の一等賞を取るぞ!」(目標)「そのためには、スタートダッシュで差をつけて、そのままゴールまで走り切る!」(大きな絵・方向性)
- 戦術:「毎日朝早く起きて、スタートの練習をする」「本番の日は、朝ごはんをしっかり食べる」「足に合った新しいシューズを買う」といった、具体的な練習方法や準備のこと。
どうでしょうか?「一等賞を取る」という戦略があるからこそ、「スタートダッシュの練習」という戦術が意味を持つことが分かりますよね。戦略がないまま、闇雲に「毎日走る!」だけでは、なかなか一等賞は取れません。
広告の世界でも同じです。この「戦略」と「戦術」をしっかり分けて考えないと、広告は「ただお金がかかるだけのもの」になってしまいがちです。
この記事では、なぜ「戦略」と「戦術」を混同すると広告が失敗するのか、そしてどうすれば成功に導けるのかを、素人目線で分かりやすく解説していきます。あなたの広告が、無駄なく効果を出すための「正しい考え方」を身につけていきましょう。
第1章:「戦略」は「地図」!どこへ向かうかを知る羅針盤
「戦略」とは、あなたのビジネスがどこを目指し、そのためにどんな道筋をたどるのかを示す「大きな地図」のようなものです。この地図がないと、どんなに高性能な車(=広告)を持っていても、どこへ向かえばいいか分からず、迷子になってしまいます。
1. 戦略を決めるために考えること
良い戦略を立てるには、いくつかの大事なことを決める必要があります。まるで、宝探しの前に「どんな宝を探すか」「どこに宝がありそうか」を考えるようなものです。
- ゴール(目標)は何か?:
- 「何を達成したいのか?」を具体的に決めます。「売上を増やす」だけでなく、「来月末までに〇〇の商品の売上を2倍にする」とか、「新規のお客様を毎月100人増やす」といったように、数字で測れる目標にすると、後で「できたかできなかったか」がハッキリ分かります。
- 例:運動会で「徒競走で一等賞を取る」のか、「リレーでクラス優勝を目指す」のか。目標が違うと、練習方法も変わりますよね。
- 誰に売るのか?(ターゲット):
- 「誰があなたの会社のお客様になってくれるのか?」を明確にします。前回のSTP理論で学んだ「セグメンテーション」や「ターゲティング」がここで活きてきます。例えば、「20代の美容に興味がある女性」なのか、「子育て中のお母さん」なのか、ターゲットが違うと、どんな言葉で話しかけるかも変わってきます。
- 例:クラスの足が速い子たちの中で、一番になるのか、それとも、今まで運動が苦手だった子が、少しでも速くなることを目指すのか。
- 何を強みとしてアピールするのか?(差別化・ポジショニング):
- ライバルと比べて、「うちの会社や商品は、どこが特別なのか?」という強みを考えます。「うちは価格が安い」「うちは品質が最高」「うちはサポートが手厚い」など、お客様に「ここがいいな」と思ってもらえる「選ばれる理由」を見つけます。
- 例:足が速いだけでなく、「スタートダッシュが特に速い!」とか「最後までペースを崩さず走り切れる!」といった、自分の得意な部分を見つけるようなものです。
これらのことを明確にすることで、あなたのビジネスの「大きな絵」が見えてきます。この「大きな絵」こそが、広告を成功させるための「戦略」なのです。
2. 戦略がないとどうなる?
もし戦略がないまま広告を出すと、まるで霧の中で船を出すようなものです。
- 目的が曖昧になる:「何のために広告を出しているんだろう?」と分からなくなり、最終的に何が成功で何が失敗なのかも判断できなくなります。
- ターゲットがぼやける:誰に伝えたいのかが曖昧になるため、万人に向けたメッセージになり、結果的に誰の心にも響かなくなります。
- お金と時間の無駄遣い:効果が出ない広告に、いつまでも費用をかけ続けてしまうことになります。まるで、どこを掘ればいいか分からないのに、ひたすらシャベルを動かし続けるようなものです。
- 一貫性がなくなる:その時々の流行に流され、コロコロと広告のやり方を変えてしまい、お客様に「この会社って、結局何がしたいの?」と思われてしまう可能性があります。
だからこそ、「戦略」を立てることは、広告を出す前に必ず行うべき、一番最初の、そして一番大切なステップなのです。
第2章:「戦術」は「具体的な動き」!戦略を実現する武器
「戦略」でどこへ向かうか、どんなゴールを目指すかを決めたら、次は「戦術」の出番です。戦術とは、その戦略を実現するための「具体的な行動」や「やり方」のこと。宝探しで言えば、どこを掘るか決めたら、どんなシャベルを使って、どう掘るか、といった具体的な作業です。
1. 戦術を決めるために考えること
「戦略」が決まっていれば、戦術はとても決めやすくなります。なぜなら、「戦略」が方向を示してくれるからです。
- どんな広告を出すか?:
- テレビCM、インターネット広告(Google広告、Yahoo!広告、SNS広告など)、チラシ、雑誌広告など、数ある広告の中から、ターゲットのお客様に最も届きやすいものを選びます。
- 例:若い人に届けたいならSNS広告、地域の人に知らせたいならチラシ、幅広い層に知ってほしいならテレビCMなど。
- 広告の内容はどうするか?:
- どんな写真や動画を使うか、どんなキャッチコピーにするか、どんな文章にするか、など、広告の中身を具体的に考えます。お客様の心に響くメッセージを作るのが大切です。
- 例:ターゲットが「健康志向の主婦」なら、健康効果をアピールする言葉や、家族が笑顔で過ごせる写真を使う。
- いつ、どのくらい出すか?:
- 広告をいつからいつまで出すのか、どのくらいの頻度で出すのか、予算はいくらにするのか、といった具体的なスケジュールや費用を決めます。
- 例:新商品発売のタイミングで集中して広告を出す、キャンペーン期間中に予算を増やすなど。
- Webサイトをどう見せるか?:
- お客様が広告を見てWebサイトに来てくれた時、どうすればお客様が商品を買いたくなるか考えます。商品の魅力をもっと伝える写真や文章、お客様の「買いたい!」を後押しするボタンの配置など、Webサイトの細かい改善も戦術です。
- 例:商品ページに「お客様の声」を載せる、購入ボタンを大きく分かりやすくする。
これらはすべて、戦略という「大きな絵」を実現するための「具体的な動き」であり、「戦術」なのです。
2. 戦術だけ考えているとどうなる?
もし戦略がないまま、戦術だけをあれこれ考えてしまうと、どうなるでしょうか?
- 場当たり的な広告になる:「なんか最近、動画広告がいいらしいから、うちもやろう」とか、「ライバルが新しい広告を出したから、真似しよう」といったように、その場の思いつきで広告を出してしまいがちです。
- 効果が続かない:一時的に売上が上がっても、なぜそうなったのかが分からず、次に繋げることができません。成功も失敗も、運任せになってしまいます。
- バラバラなメッセージになる:広告ごとに言っていることが違ったり、Webサイトと広告で違うことを言っていたりして、お客様に「この会社って、結局何が言いたいの?」と混乱させてしまいます。
- お金の無駄遣い:試行錯誤ばかりで、効果が出ない広告に次々とお金を投入してしまうことになります。まるで、地図がないのに、色々なシャベルを試しながら、あっちこっちを掘りまくるようなものです。
このように、戦略なくして戦術を繰り出すことは、羅針盤なしに大海原へ漕ぎ出すようなもので、非常に危険なのです。
まとめ:「戦略」が道を示し、「戦術」がその道を切り拓く
「戦略」と「戦術」。この二つの言葉は、似ているようで全く違う、とても大切な役割を持っています。
- 戦略:あなたのビジネスの「大きな目標」と、そこへたどり着くための「大きな方向性」を決めること。まるで、宝の場所が書いてある「地図」です。
- 戦術:その「戦略」を実現するために、具体的に「どう行動するか」「どんな道具を使うか」を決めること。まるで、宝を掘り出すための「シャベルの使い方」です。
広告を出す前に、まずあなたがすべきことは、しっかりと「戦略」を立てることです。
「誰に、何を、どうやって売って、どんな目標を達成したいのか?」
この「大きな絵」がハッキリしていれば、どんな広告を、どんな内容で、いつ、どこに出せばいいのか、という「戦術」は自然と見えてくるはずです。
戦略がないまま、流行りの広告手法に飛びついたり、なんとなく「かっこいい」広告を作ったりしても、それは「宝探し」の地図がないのに、闇雲にシャベルを振り回すようなものです。時間と労力、そしてお金が無駄になってしまう可能性が非常に高いでしょう。
あなたの広告が、単なる「費用」ではなく、「投資」としてしっかりと結果を出すために、今日からぜひ、「戦略」と「戦術」を分けて考える習慣をつけてみてください。
まず「戦略」を立て、次に「戦術」を練る。この順番を間違えなければ、あなたのビジネスは、きっと目指すゴールにたどり着けるはずです。